<関西だしの特徴と歴史>
今や東京でも、「関西風だし」と言われる商品や味付けがあちらこちらに見られます。
では、「関西だし」って、どういう「だし」を指すのでしょうか?一般的に「うどんだし」に代表される「関西だし」は、だし感の強いあっさりとした味と色の薄さが特徴です。
ちなみに「うどんだし」のように、味付けをしたものも「だし」と呼ぶのは関西の言い方で、関東では一般的に、味付けしたものは「つゆ」と呼んで区別していますが、ここでは関西風に「だし」を使っていきましょう。
「関西だし」の色の薄さは、「うすくち醤油を使うからだと言われています。
よく言われる都市伝説に、「関西のうどんだしって、色は薄いけど、実は塩分は関東より多いんだよ。」と言うものがあります。まあ、冷静に考えればそんな訳はありません。実際に飲み比べれば、あきらかに関東の「うどんだし」の方が、塩辛いわけですから。
ではなぜ、こんな噂が生まれたかというと、それは「うすくち醤油」が「こいくち醤油」より塩分濃度が“1%~2%”高いからです。
この差は、製法上の違いからなのですが、そもそも「うすくち」の漢字は、「薄口」ではなく、「淡口」が正式で、「うすくち醤油」が作られた時、あくまでも素材の色を生かすために、色を淡くしただけなので、「味が薄い、塩分が薄い」と誤解されないようにと、当てられた漢字だそうです。
醤油の塩分濃度が高いのであれば、やっぱり「関西だし」の方が塩辛いのではと思われるかもしれませんが、実は醤油の使用量が「関西」と「関東」とでは違います。店舗によって分量の差はありますが、「関東」の醤油の使用量は、多い所で「関西」の4倍以上使っており、塩分濃度も倍以上となっています。
つまり「関西だし」の色の薄さは、醤油の違いもありますが、その使用量の少なさも大きな要因だったわけです。
そして、このように調味料が少なくても、美味しく、だしが作れる秘密が「だし」にあります。その原点は、江戸時代の京都の公家(くげ)文化にあると言われています。公家とは、日本において朝廷に仕える貴族・上級官人の総称で、鎌倉時代に形成され、一時期は大きな力も持っていました。
しかし武士社会が進むにつれ次第に有名無実化し、江戸時代に入ると公家らは京都の御所周辺に集められ、幕府から保護を受けていましたが、そのほとんどは、貧乏公家と呼ばれる、収入が少なく、十分な食料も買えないような人達でした。ただ、その懐具合に対し、気位は高かったため、地元の産物をわずかな調味料で、豪華に美味しく食べることを探求し、食器にこだわり、薄味で素材の旨さを引き出した「京料理」が生まれました。
そしてこの時、素材の旨さを引き出す技術の要が、昆布だしをベースとした「だし」だったわけです。「関西」の食文化は、この「京料理」の影響を大きく受けました。特に昆布とかつお節の「合わせだし」の発祥の地と言われる大阪では、比較的裕福な商人の町であったこともあり、「だし」のうま味を活かした薄味の文化が根付いたようです。
現在では「和食」の「だし」と言えば、「昆布」と「かつお節」の「合わせだし」が当たり前のように関東をはじめ、全国で使われています。
「関西」で生まれた「合わせだし」が、全国に広まった大きなキッカケとしては、大正・昭和初期に、大阪で生まれた「割烹(かっぽう)」という、料亭のお座敷料理を、カウンター席やテーブル席などで気軽に食べさせるスタイルが全国で大流行したことが挙げられます。この時に大阪から「割烹」のスタイルと共に、全国に大阪の料理人が引き抜かれ、この料理人達によって「関西だし」が広がり、定着したと言われています。
<だしと健康>
「だし」が美味しいことは、もう皆さん知っていますが、身体にとってはどうなんでしょう?
「だし」の「うま味」成分の代表である「グルタミン酸」は、三大栄養素の一つであるアミノ酸です。アミノ酸は、身体にとって不可欠な成分であり、かつ脂肪や糖に比べると低カロリーな栄養素でもあります。
「うま味」は、舌の感じることのできる5つの味覚成分の一つですが、そもそもこの味覚成分は人間の健康と大きく関わっているのです。味覚は、人間が生きていくために必要な食事を、安全かつ効率的にとるために備わっている本能的な能力の一つです。
人間の舌には味蕾(みらい)と呼ばれる器官があり、それが基本味である甘味(かんみ)・酸味(さんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)・うま味の成分を感じ、それが脳に伝わり、脳が「甘い」とか「酸っぱい」、またはそれらの複合的なものとして「こくがある」とか「味に広がりがある」と言う風に認識をするわけです。
それによって人間の脳は本能的に、「甘いもの」はエネルギー源、「酸っぱいもの」は腐敗のシグナル、「塩辛いもの」は体液バランスに必要なミネラルの供給源、「苦いもの」は毒物への警告、「うま味の強いもの」は体に不可欠なアミノ酸や核酸の供給源というように、必要な栄養素を判別するようになっているわけです。
また、運動などをして汗をかくと、塩辛いものが食べたくなったり、疲れてくると甘いものが食べたくなり、いつもよりもおいしく感じるのも、脳の本能的な働きです。つまり、その時の環境や健康状態などの変化によって、味覚の感じ方が変化し、必要な食べ物を本能的に求めるように調整されています。
しかしながら、誰しも決して本能に組み込まれたとおりに食事を選んでいるかというと、そうではありませんね。非常に酸味の強いものや、苦味のある食べ物も人によっては美味しく食べることができます。
これは後天的に、安全であることを知ることで、コーヒーや苦みのある野菜などに「おいしさ」を感じるようになったり、前もって「おいしい」とか「体に良い」という情報を得ることで、より「おいしさ」を感じられるようになることが判っています。
小さい頃から頻繁に食べてきたもの、いわゆる「おふくろの味」により「おいしさ」を感じたり、地域による味の好みの違いも、こうした学習によるものですし、食べる前に、口コミや情報誌などによって料理への期待を膨らますと、脳内に快感を増やすドーパミンが分泌され、「おいしさ」を増幅することもわかっています。
ただ、飽食の時代と呼ばれる現代、こうした味覚の機能がアダとなって健康にマイナスの影響を与えてる状況が生まれています。
本来、「おいしい」という感覚は、必要な栄養素をより積極的に取り込むための機能なのですが、食べるものが豊富に手に入る現代では、栄養的に過剰となっているのに食べ続けてしまったり、またはジャンクフードのように必要な栄養素が含まれていないにも関わらず、その味覚のために「おいしさ」を感じ、食べ続けてしまうといったことが起こります。
その結果待っているのが、肥満や栄養失調です。ご存じのとおり、多くの生活習慣病は肥満とともに起こります。さらに最近では、太っているのに栄養が足りず脳出血、貧血、感染症、転倒、骨折などが起こりやすくなる新型栄養失調症の人が増加しているとの報告もあり、大きな社会問題となっています。
では、この「おいしさ」の誘惑に打ち勝つにはどうしたら良いのでしょう。医者に聞けば、解決方法は明確です。それは、適度な運動とバランス良い食生活の実践です。言うのは簡単ですが、本当に難しいですよね。
動物は本来、狩りなど必要な時のために出来る限り無駄なエネルギーを使わないように本能的に運動を嫌がるようにできている上に、「おいしさ」という快楽の誘惑に打ち勝たなければならないわけです。実際、肥満大国のアメリカはすでに40年以上この問題に取り組んでいますが、未だ解決したとは言い難い状況です。
そんなアメリカがもっとも注目している食事の一つが実は和食なんです。
和食は、全般に低カロリーで栄養のバランスも良く、しかもおいしい。食事のすべてを和食にはなかなかできませんが、少しでも食生活に和食を加えることで、全体量として、高カロリーの脂肪と糖の摂取を減らすことが出来ます。
特に小さいころから「だし」を使った料理を食べ、日本の伝統的な「うま味」を経験することで、脂肪と糖一辺倒の食事に走ってしまうのを、ある程度防止できると言われています。
日本人が、年を取って和食など味のあっさりしたものが好きになるのは、実は幼少期の食事体験のおかげで、身体が本能的に低カロリーの和食などを好むように調整してくれているからだそうです。ですので欧米人など、「だし」の味を知らない人たちは年をとっても薄味好みにはならず、ただ食事の量が減るだけなのだそうです。
今後の日本人の健康を作っていくためにも、積極的に「だし」を食生活に取り入れていきたいですね。
<だしのうま味の種類>
「だし」に含まれる「うま味」成分には、昆布に含まれる代表的な「グルタミン酸」の他にも、煮出す食材によって、いくつか種類があります。
一番有名な「グルタミン酸」はアミノ酸の一種で、「うま味」成分であると同時に、私たちの体の中でも作られており、たんぱく質を構成したり、神経伝達物質として、体の維持のために必要不可欠の物質でもあります。植物性食材、動物性食材両方にまんべんなく含まれており、中でも昆布を筆頭にチーズ、緑茶、いわし、トマトや白菜などに多く含まれています。
また母乳にも、昆布に匹敵する量の「グルタミン酸」が含まれており、私たちが生まれた時から「うま味」に親しんでいることが判っています。
「グルタミン酸」と言えば「味の素」が有名ですが、これは「グルタミン酸」の抽出に成功した池田菊苗教授が工業的な製法を考案し、製品化したものです。
「味の素」、現在は「うま味調味料」と呼ばれていますが、以前は「化学調味料」と呼ばれ、その安全性が大きな問題となっていましたが、これは「グルタミン酸」自体の安全性というより、主にその製法が原因となったようです。1970年代(昭和45年ごろ)まで、「味の素」は石油由来原料で作らており、この石油に含まれる毒性が問題となったのです。
さらに1960年代に中華料理を食べた少数のアメリカ人が、頭痛、歯痛、顔面の紅潮、体の痺れなど「チャイニーズ・レストラン・シンドローム」と呼ばれる症状を訴えた問題で、中華料理に大量の「グルタミン酸」が使われていたことが原因ではないかと騒がれたり、有害性を主張する論文が発表されたことなどが重なり、「グルタミン酸」は体に悪いと言うイメージが定着してしまいました。
しかし現在では「グルタミン酸」の製法は、主にサトウキビもしくはトウモロコシやキャッサバを原料として、味噌や醤油と同じように、グルタミン酸生産菌と言う微生物の力を借りてつくる発酵法が主流となっていますし、「チャイニーズ・レストラン・シンドローム」の事例は「グルタミン酸」との関係性が否定されています。
ただし、塩や砂糖と同じように、大量に摂取し続ければ、やはり体に良くないことは否定できません。
気をつけなければならないのは、塩や砂糖などは、その量が過剰だと、「しょっぱ過ぎる」や「甘すぎる」と言ったように、味の濃さを感じることで過剰摂取に気づくことができるのですが、「うま味」はある程度の分量を超えると味覚がマヒしてしまい、過剰摂取に気づきにくいことが判っており、結果ついつい大量に使用、過剰摂取になりがちになってしまうことです。
そうなれば、やはり体にも影響が出る可能性が出てきますし、よく言われるように「グルタミン酸」の味ばかりが強調され、せっかくの素材のおいしさが判らなくなってしまいます。
だからこそ、調味料として「グルタミン酸」を使うのではなく、出来る限り食材から“煮出す”形で適量な“うま味”を使用することが健康のためにも望ましいわけです。
次に「グルタミン酸」についで有名な「うま味」成分が「イノシン酸」です。
「イノシン酸」はアミノ酸の一種ではなく、「核酸」とよばれる物質が変化したものです。
「核酸」は、すべての動物の細胞内に存在し,たんぱく質の合成や生物の傷ついた遺伝子を修復するなどの作用を持つ重要な物質で、体内でも合成されますが、食べものからの補給もできます。「核酸」は、かつお節やいわし、たい、さば、そして鶏肉、豚肉など魚や肉類に多く含まれますが、野菜類には含まれていません。
また、「イノシン酸」は生きている動物の中には存在せず、動物の死後、酵素の働きによって核酸が変化して作られます。それなのに日本人は「イノシン酸」が発見されるずっと以前から、かつお節という形で、魚の死後、熟成させて「イノシン酸」を最大限に引きだし、乾燥させることで腐敗を止めるという手法を開発していたのですから驚きです。
その他の「うま味」成分としては、きのこ類に含まれる「グアニル酸」があります。「グアニル酸」は「イノシン酸」と同じく「核酸」が変化して作られる成分ですので、生のものより、乾燥椎茸のように、細胞壁が壊れた状態のもののほうが、ずっと「グアニル酸」が多く含まれます。
また貝類に含まれる「コハク酸」や、野菜類や大豆製品に多く含まれる「アスパラギン酸」、魚介類・畜肉に多く含まれる「アデニル酸」なども「うま味」成分として認められており、こうした「うま味」成分を、複合的に煮出すことにより「だし」の「おいしさ」がつくられているわけです。
<「だし」と「うま味」の関係>
「だし」はなぜ、和食の要となったのでしょう。それはもちろん、「だし」を美味しいと感じることができたからに他なりません。
その「だし」のおいしさの秘密、それが「うま味」です。
■「うま味」と「おいしさ」
「うま味」という名前が付いているのでややこしいですが、実は「うま味」と「旨(うま)さ」、つまり「おいしさ」とは違います。
確かに「うま味」は、「だし」などの「おいしさ」の重要な要素ではありますが、決してイコールでなく、あくまで甘味や塩味と同じく化学的な味覚成分の一つなのです。
「うま味」は明治以降、日本人が中心となり、科学的に解明されていきました。
この「だし」のおいしさの中心要素である「うま味」は、甘味、酸味、塩味、苦味のいずれとも違う第5の味として提起され、今や「うま味」は、日本だけでなく世界的にも「UMAMI」と呼ばれ、その地位を確立しています。
ただこの「UMAMI」も、実はすんなりと世界に認められたわけではありませんでした。
「うま味」の第1発見者は、「うま味」の命名者でもある東京帝国大学(現在の東京大学)教授だった池田菊苗(いけだきくなえ)氏です。世界では19世紀以前、舌が感じることのできる味覚は、酸味(さんみ)・甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)の4つとされていました。しかし日本人は、「だし」のおいしさの要素に、この4つだけでない何かがあることを、「だし」の味を通じて経験的に知っていたのです。
そんな中、1908年(明治41年)に京都出身で小さいころから昆布だしに馴染んでいた池田菊苗教授が、ついに昆布の中から舌が感じることのできる第5の味覚である「うま味」物質を発見しました。この時「うま味」成分として発見されたのが、アミノ酸の一種である「グルタミン酸ナトリウム」です。
「グルタミン酸」という成分の名前は、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。そう、うま味調味料である「味の素」の成分ですね。実は池田菊苗教授は「うま味」を発見すると同時に、この「うま味」成分「グルタミン酸ナトリウム」の工業的な製法を考案しており、発見の翌年1909年(明治42年)には販売を始めています。そしてその商品こそが「味の素」なんです。
ちなみにたまに誤解されて記載されたりしていますが、池田菊苗教授が発見したのは、「グルタミン酸」が「うま味」成分であるということです。「グルタミン酸」自体は、1866年、ドイツの化学者リットハウゼンによって発見されました。
池田菊苗教授が発見するまで、「グルタミン酸」と「うま味」が結びつかなかったのは、「グルタミン酸」は「ナトリウム」と結合しないと、味をみても酸っぱいだけで「うま味」を感じないためだったようです。
この発見に続き、1913年(大正2年)には、池田菊苗教授の弟子であった小玉新太郎教授が、鰹節から抽出した「イノシン酸」も「うま味」成分であることを確認し、1957年(昭和32年)には、ヤマサ醤油の研究員であった国中明(くになかあきら)氏がシイタケに含まれる「グアニル酸」が新たな「うま味」成分であることを発見しています。
■うま味が証明されるまで
このように次々と日本で発見された「うま味」成分ですが、当時多くの欧米の学者はこの発見に懐疑的で、「うま味は塩味・甘味などがほどよく調和した味覚に過ぎない」であったり、「うま味を感じられるのは日本人だけ」と言った間違った認識が主流でした。実はこの認識がくつがえされたのは、なんと「うま味」が発見されて約100年後となる2000年(平成12年)で、マイアミ大学の研究グループが、舌の味蕾(みらい)にある感覚細胞に、「グルタミン酸」に反応する窓口である受容体を発見したことによって、舌が、酸味・甘味・塩味・苦味とは別に「うま味」を感じていることが証明され、ようやく「うま味」は、世界に認識されることになりました。
こうして「うま味」は世界中の誰もが感じている味であることがわかったのですが、当時、世界には「うま味」に対応する適当な言葉がなく、「UMAMI」として現在定着しています。このことからも、他の4つの味と「うま味」との違いをはるか昔から認識していた日本人の味覚の鋭さが証明された形となったわけです。
ただ、現在は日本人も、ジャンクフードなど味の濃い食品に慣れてしまい、「うま味」を感じにくくなっていると言われています。「うま味」を発見した日本人の、世界に誇れる味覚を失わないためにも、食生活の中にどんどん「おだし」を活用してほしいと思います。
<日本のだしの歴史>
広い意味での「だし」は世界中に存在しますが、昆布とかつお節の合わせだしに代表される日本の『だし』とは何が違うのでしょう。
世界では、肉類をベースに素材をそのまま煮出し、脂肪分を使って食材に“うま味”をコーティングする「だし」が主流ですが、日本ではかつお節やだし昆布に代表される乾燥加工された素材を使って、ほとんど脂肪分を含まない「うま味物質」を抽出し、食材に“うま味”を移し、浸透させることで食材の持つ本来の持ち味を引き立てるという、世界でも類を見ない独特な調理法を完成させてきました。スープが主食となりえる海外に対し、吸い物なども含め徹底して脇役に徹する日本の“おだし”は、まさに日本にしか存在しない特別な調味料なのです。
では、この日本の「だし」はいつごろ生まれたのでしょう。
■日本のだしの誕生
「だし」の代表的な素材である「昆布」と「かつお」の歴史は古く、700年ごろ(奈良-飛鳥時代)にはその名前が文献に登場しており、当時より重宝されていたことがうかがえます。ただ、「だし」という意味の言葉が文献に登場するのは、それよりはだいぶ遅く、江戸時代(1603年~)に入ってからです。
現在、「だし」の記述とされている最も古い文献は、江戸時代初期に完成した、古書を収集、編集した叢書(そうしょ)「群書類従(ぐんしょるいじゅう)」に収録されている四条流などに並ぶ日本料理の流派、大草(おおくさ)流の料理書である「大草殿(おおくさどの)より相伝之聞書(そうでんのききがき)」です。
この書は室町時代の後期の資料と推定されており、料理をはじめ、魚鳥の取扱い、飲食の作法について紹介しており、その中で白鳥を煮て調理する際に「にたし」というかつお節を用いた「だし」や、「だし」をとる際にだし袋を使用していたという記述が見られます。
さらに、江戸時代に入ると、江戸時代初期の代表的な料理書である「料理物語」など多くの文献に「だし」を利用した料理が登場してきます。
江戸中期になると、昆布と鰹節との「合わせだし」の記述もあり、このころには現代に近い「だし」の取り方が発明されていたことがうかがえます。
このように日本で「だし」が重宝され、発展した背景には、日本特有の食に対する考え方があったと言われています。
日本では江戸時代初期ごろまで、家畜を食べる習慣がほとんどありませんでした。これは6世紀半ばに日本に伝来し、奈良時代(710年~)にはその思想が定着した仏教における肉食禁止の考え方が、当時すでに稲作を生活基盤としていた日本において、稲作に役に立つ動物の保護という考え方と合わさり、日本人は、しだいに肉食そのものを稲作に害をもたらす“穢れ(けがれ)”と考えるようになったためだと言われています。
実際、天武天皇が、675年(天武4年)に、狩猟・漁獲の方法を制限し、牛・馬・犬・猿・鶏の肉食を禁止する令を最初に出して以来、たびたび肉食禁止令は発令されており、明治天皇が肉食を解禁するまで、肉食禁止は国策の基本として定められていました。
ただ実際には、途中何度も禁止令が出されていることからも判るように、家畜はダメだけど、野生肉は良いと言ったり、馬肉のことを「さくら」、イノシシ肉を「ぼたん」などと言い換えて食べたり、野鳥は食べることが許されていたので、ウサギを野鳥だと言い張り、1羽、2羽と数えてみたりと、なんだかんだと屁理屈をこねながら庶民を中心に肉食は続いていたようですが、それでも他国にくらべ極端に肉を食べない民族であったことは間違いありません。
結果、日本人の主要食材は米を中心とした穀物と魚介類、野菜となったわけですが、残念ながら、どうしてもこれらは肉のうま味に比べるとどうしても劣っています。
そこで、このうま味を補うために発展したのが、「だし」だったわけです。
中でもこの「だし」文化を大きく発展させたのは、京都を中心とした関西でした。
「だし」が「煮出し」として文献にあらわれる江戸時代、京都は天皇家のご家来衆と、その関係者が作り上げた公家(くげ)文化のまちでした。しかし江戸幕府が実権を握っていた江戸時代、そのほとんどは貧乏公家と呼ばれる人たちで、収入が少なく、十分な食料も買えないような状態だったようです。ただ、その気位は高かったため、地元の産物をわずかな調味料で、豪華に美味しく食べるために、食器にこだわり、薄味で素材の旨さを引き出した京料理が生まれと言われています。その旨さを引き出す技術の要が、「だし」だったわけです。
そして、この京都で磨かれた「だし」文化が、天下の台所と呼ばれ物流、商業の中心地であった大阪で庶民料理にも浸透し、全国へ発信されていくことになったわけです。
<おだしの定義>
「だし」という言葉は、日本人なら誰でも知っている言葉ですが、あらためて「だしって何?」と聞かれると少し言葉に詰まってしまう方もいるのではないでしょうか。
『世界大百科事典 第2版』を調べてみると、
「だしとは、煮出し汁(にだしじる)の略で、だし汁とも呼ぶ。動植物食品のうま味成分を水に溶出させたもので、塩、みそ、しょうゆ、酢、みりん、砂糖などの調味料と合わせ用いて、料理の味を向上させる役割をもつ。また、すでに調味料を加えたそばのつけ汁やなべ料理の割下(わりした)をこの名で呼ぶこともある。」
と書かれています。ようするに、食材のうま味が溶けたお湯を「だし」と呼ぶわけです。

この定義から言えば、かつお節や昆布から煮出したものだけではなく、肉や野菜を煮込んだ汁や、極端に言えば料理につかうのであれば、お茶やコーヒーだって「だし」になりえるということですね。
■世界の「だし」
さらに、世界各地の料理には様々な伝統的な汁ものやスープ類などの煮出し汁があり、日本だけではなく、世界中に「だし」は存在するわけです。
例えば、中華料理であれば、「豚骨スープ」として日本でもなじみのある、骨付き肉を煮出して取る、こってり濃厚な「排骨湯(ぱいぐーたん)」や、丸鶏や豚肉に、生姜、ネギを加えて取った、澄んだ中華だしである「上湯(しゃんたん)」などがありますし、フランス料理であれば、肉類や魚介類、香味野菜、香草などを素材とする、スープベースに使用する「ブインヨン」や、ソースベースに使う「フォン」などが有名です。
<おだしの発祥>
では、こうした世界の「だし」はいつ頃、どうやって生まれたのでしょう?
人間が火を使い始めたのは、170万年から20万年前までと、広い範囲で説が唱えられていますが、残念ながら「だし」は、煮出すことで初めて生まれるものですから、人間が火を使うことを覚え、食べ物を焼くようになっただけでは、まだ生まれることはできません。要はそこから人間が火の上に容器を置き、中に水を入れて食べ物を煮て食べるようになるのを待たなければなりませんでした。
まず、最初に「だし」が生まれたのは約1万5000年前の、木の実や果実などの菜食が主体で、雨の多い地帯でもあった東アジア地域だったと言われています。でん粉を豊富に含む穀物は、生のままでは人間の消化器ではほとんど吸収できませんが、火で焼くことで、でん粉の大きな粒子が分解され、消化吸収できるようになることを、人は早くから経験上知っており、火を使い始めた人類は、次第に穀物が早く焼けるように粉にし、さらに加工しやすいように水を加えてこねて、団子状にして焼くようになりました。つまり、パンが誕生したわけです。
しかし、木の実などには有毒な成分を含むものや、苦味、渋味といった、食べ物としてはふさわしくないものも多くあり、これらは焼くだけでは食べることができませんでした。
■煮るという技術
ところが、いち早く「土器」と呼ばれるうつわを作りだしていた東アジアの人々は、こうした木の実などの植物も、煮ることで有毒成分が抜けたり、苦味や渋味がなくなって、しかも柔らかくなり食べられるようになるという事を発見し、豊富な食べ物を手に入れることができるようになりました。
木の実や雑穀が、煮られるようになれば、当然その中に肉や魚介類も入れられるでしょうし、その結果、煮られたものだけでなく、その煮汁が美味しいということや、肉や魚介類と一緒に煮た穀物や植物が、それだけを単独で煮るよりも、はるかに美味しくなるということにも、多分すぐに気がついたと想像できます。
このように、煮るという技術が発達したことで、同時に「だし」が生まれ、焼いただけでは味わえない“うまさ”を手に入れたわけです。
こうして生まれた「煮出し汁」は、それぞれの地域の食材が使われて、その地方独自の味を作りだし、それぞれの民族において独自の料理のベースになる食品として完成され、今日に伝えられることになったのです。
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| うどんのおだしでえびの茶わん蒸し |
| 材料(4人分) |
うどんのおだしパック
水
卵
しいたけ(薄くスライスする)
鶏胸肉(1㎝角に切る)
えび(背ワタを取っておく)
三つ葉 |
1袋
400㏄
2個
1個
80g
4尾
適量 |
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| 作り方 |
| ①鍋にお水400㏄、うどんのおだしパック1袋、えび4尾、1㎝角の鶏胸肉を入れて火にかけ、沸騰したら中火で5分煮て、だしパックを取り出し、冷ましておく。 |
② 1の粗熱が取れたら、器に鶏肉を分け入れ、えびはよけておく、残った出汁に溶きほぐした卵を入れて混ぜ、漉し器で漉す。 |
③2の器にしいたけを入れ、漉した卵液を注ぎ、最後にえびを乗せて蒸し器で15分ほど蒸す。 |
④蒸し終わったら、三つ葉を適量のせて完成。 |
| ※電子レンジで加熱する場合は、器にラップをして穴を数か所開け、150~200wで4分ほど加熱し、一度確認し、固まっていなければ30秒ずつ加熱しましょう。 |
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このレシピで使われた商品
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化学調味料・保存料 無添加 うどんのおだし100g(20g×5袋)入
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| うどんのおだしでたけのこご飯 |
| 材料(4人分) |
うどんのおだしパック
水
お米
たけのこの煮物※1
にんじん(千切り) |
1袋
450㏄
2合
200g
1/3本 |
| ※1:たけのこの水煮を使う場合は、しょう油大さじ1.5、みりん大さじ1 |
| 作り方 |
| ①鍋で水450㏄とうどんのおだし1袋を入れて4~5分煮出す。 |
② お米を普段通り洗い、釜に入れ、①で煮出したうどんのおだしを入れ、水加減が足りなければ水を足す。 |
③②の上に、たけのこ、にんじんを乗せて炊飯する。 |
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このレシピで使われた商品
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化学調味料・保存料 無添加 うどんのおだし100g(20g×5袋)入
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| 関西おだしのすじこん |
| 材料(4人分) |
関西おだし(基本のおだし)
牛すじ(下処理したもの)
こんにゃく(熱湯で3分下茹でしたもの)
砂糖
酒
しょう油
しょうが(千切り) |
400㏄
200g
200g
大さじ2
大さじ1
大さじ2
1かけ |
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| 作り方 |
| ①牛すじ肉は、たっぷりのお湯で茹でこぼし(※)、ザルにあけてよく洗い、一口大に切っておく。 |
②鍋に、①と他の材料をすべて入れて、1時間弱火で煮ます。途中水分が足りなくなると水を足します。牛すじが柔らかくなったら完成です。
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お好みで、一味をプラスしてもおススメです。 |
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| ※「茹でこぼし」…沸騰したらゆで汁を捨てること |
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このレシピで使われた商品
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化学調味料・保存料 無添加 関西おだし300g(10g×30袋)入
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| 関西おだしのだし巻き卵 |
| 材料(2人分) |
基本のおだし
玉子
みりん
油 |
大さじ6
4個
小さじ2
適量 |
| おだしとみりんのみの味付けで優しい味付けです。 |
| 作り方 |
| ①卵をボールに割って溶きほぐし、おだしとみりんをいれて混ぜる。 |
②熱した卵焼き器に油少々をひき、卵液を5mmの深さくらい入れる。 |
③②がかたまりかけたら、巻いていく。 |
④③に卵液を足しながら、巻いていく。 |
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このレシピで使われた商品
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| 関西おだし 50g(10g×5袋) |
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